神戸生まれの神戸育ち、いわゆる関西人である私は、ステレオタイプ的関西人像のとおりアンチ巨人の阪神ファンである。セリエAではACミランよりインテルで、リーガ・エスパニョーラでは、レアル・マドリードよりバルサを応援してしまう。華も人気もあるチームだけども、結果がともなわない、何年(何十年?)かに一度は夢を見せてくれるのだけど、結果がでないところが、またかわいかったりするというところがファン心理をくすぐる。アメリカ文学ではヘミングウェイが、同時代の作家であるフィッツジェラルドと自分を対比して「蝶は舞う、しかし牛は存在する」と表現したが、私は本能的に、危うく舞う蝶に惹かれてしまう性分のようだ。
クライフのもと一時代を築いたバルセロナは、92年のトヨタカップに出場、ストイチコフが左足でニアに叩き込んだ強烈なゴールで先制したものの、テレ・サンターナ率いるサンパウロがライ−の2ゴールで逆転勝ちを収めた。個人的にはトヨタカップの歴史のなかのベストゲーム。その後もバルセロナには、ロナウドやリバウドが組織の力をねじ伏せる、圧倒的な個人の力を見せてくれた楽しみがあったものの、現在のファンハールのバルサにはどうも愛着が持てない。
と、前置きが長くなってしまったが、どちらかといえばレアルへの思い入れの薄い私にも今年のトヨタカップは、見逃してはならないゲームに思われた。ここで述べるまでもないスター軍団。ワールドカップ得点王となったロナウドまでも獲得してしまったわけだが、移籍にあたってロナウドが「レアルでプレーしたい」ということを強調していたことが印象に残っていた。単に世界のベストプレーヤーと一緒にプレーしたいというだけではなく、彼らを惹きつける力が存在していて、それが何なのか、答えを見つけたいという興味と、歴史に残るチームの、歴史的瞬間に立会いたいという単純な思いがあった。
スタンドでは、レアルのフラッグや、スペイン国旗がはためき、「マドリー、マドリー!」のコールが響き渡る。おそらくスペイン人と思われる集団の中で、苦笑いやニヤニヤ笑いを浮かべて、沈黙しているのは、おそらくマドリー以外の地域から来た人なのだろう。
しかし、ごく少数のオリンピアのサポーターをのぞけば、私を含めたレアル・ファン以外もこの日のレアルのサッカーには驚き、興奮し、感動を味わうことになる。ダイレクトのパスが、驚くべきスピードで内から外へ、後ろから前に次々と展開される。賀川さんは、このパス交換のなかで、「後ろからのパスはほとんどダイレクトでさばいていたが、それを後ろから受けに入る選手が、斜めに走りこんでスペースをつくり、守備をくずしていくのがよくわかった」という話しを聞かせてくれた。もちろん、このコメントのポイントは「斜めに」という部分にあるわけだが、一人一人のテクニックと判断力の余裕はもちろんのこと、そこまで見えないサッカー初心者にとっても、このダイレクトパスの交換には驚きを覚えたにちがいない。
勝敗という興味は、前半のロナウドのゴールが決まった時点でかなり薄れたが、オリンピアもポストを直撃するシュートなどもあり、最後までミスのない戦いは見事。まさに「ビューティフル・ゲーム」だった。
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