日本サッカーは何を経験したか
ベスト8入りをかけた試合で、日本がトルコに0—1で敗れた。宮城スタジアムには終止冷たい雨が強く降り続け、熱烈なサポーターとともに、日本の最大の後押しとなっていた「蒸し暑さ」のサポートなしでのゲーム。後半に足の止まったベルギーやロシアとは異なり、トルコの運動量は最後まで落ちなかった。先日、クラマー氏がトルコ戦に向けて「ロシア戦も、ベルギー戦も前半は goodだったが、後半はvery goodなゲームだった。トルコに勝つためには、前後半通してvery goodでなければならない」とコメントされていたが、この日の日本はとてもvery goodといえる状態ではなかった。 敗戦後、会場から立ち去らずニッポンコールを続けた人たちも多かった。不思議なことに、笑顔の人も少なからず見られた。試合に勝ちたい、勝たせたいという気持ちとともに、ビッグ・イベントに参加したい、応援自体を楽しみたいという人たちも多かったことだろう。94年にサッカー不毛の地と言われたアメリカで開催された大会では、史上最高の観客動員を動員したが、観客の多くはイベント・スノッブと言われ、その後設立されたプロリーグのMLS(メジャー・リーグ・サッカー)の人気も長続きしなかった。多くの人々がワールドカップを体感したことは、日本サッカーにとっての大きな財産であることは間違いない。これを将来につなげていくためには、関係者の工夫や努力が問われることになるだろう。私たちも当事者意識を持って、取り組んでいきたい。
そして、日本代表にも課題が残された。サポーターもマスコミも日本代表はよくやったというのが一般的な論調のようだが、トルシエ監督のコメントにもあった「経験が足りない」という言葉をしっかりと受け止めたい。シドニー五輪の準々決勝でアメリカに敗れた時も「よくやった」と皆は口をそろえたが、ワールドカップでも同じように、勝てるチャンスのあるチームに負けてしまったのだ。選手たちがよくやったのは確かだが、夢を引き延ばすための、きれいごとで終わらせてはいけない。失われた夢の喪失感と、悔しさ、苦痛こそが貴重な経験のはずである。この痛みをごまかしつづけてきたのは、サッカーに限ったことではないが。
これまで長年にわたって、苦杯を味わい続けた韓国は、イタリア相手に劇的な勝利をおさめた。勝ちたい、勝たなければいけないという熱意が、テレビを通しても伝わってきた。心からおめでとうと言いたい。その韓国と比較すると、日本の結果は身分相応というところなのだろう。ではトルコは8強に値するチームなのか?トルコは、国家、民族の持つ力、歴史は十分であることに加え、代表選手の多くがイタリア、ドイツなどのクラブで活躍し、ガラタサライがUEFAカップを獲得している。地理的にはアジアに属しながら、サッカー界ではヨーロッパに属するため、強国との試合経験には事欠かない。2000年の欧州選手権では好調のポルトガルに敗れはしたものの、サポーターの熱気は明らかに彼らが上回っており、敗戦後の落胆は本当に気の毒であった。キプロス問題で険悪な関係にあったギリシャとの2008年の欧州選手権共催に向けての、サッカーの女神からのプレゼントなのかもしれない。
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