頼りないロナウドと、守りきれないドイツ
日本と韓国にとって、文字通り歴史的なイベントとなったワールドカップが終わった。
世界中の注目を集め、いくつもの予想されざる結末を生み、さらには審判問題などの議論を呼んだ大会だったが、決勝は、ブラジル、ドイツの両横綱の対決。ワールドカップでの初顔合わせが、大会を見事に締めくくってくれた。両チームがワールドカップ決勝にふさわしいレベルに達していたかどうかは議論の分かれるところだろうが、ワールドカップの決勝にふさわしい「名前」であったことは確かだろう。98年の決勝を前にして、クライフがブラジルを評して「大会が始まる時点で、私はブラジル・チームが好きではないと話した。そして、いままた同じことを言う。ブラジルがあんなプレーで勝ってしまうのは、サッカーのためにならない」(ブライアン・グランヴィルのワールドカップストーリーより)と発言していた。今大会においても、クライフがブラジルのサッカーを誉めるとは思えないが、常にそのような議論の対象となる国という意味で、ブラジルとドイツほどワールドカップ決勝が似合う国はない。
ロナウドはあの間抜けなヘアスタイルで登場し、2ゴールをあげて得点王に輝き主役の座をつかんだ。あの髪型だけはなんとかしてくれ、と祈っていたのだが、その間抜け加減にドイツも含めた世界のサッカーファンが愛着を覚えたのではないだろうか。試合後にカフーから「彼がいちばん苦労した選手」と言われて目に涙をうかべたシーンは、彼がチームメイトからも愛される選手であることを示すと同時に、どこか大人になり切れない頼りない姿が印象的だった。ロナウドマニアの私の妻に言わせると、あの頼りなげなところが魅力なのだそうだ。なんとなく納得。
ロナウド、リバウド、ロナウジーニョの3Rと、ドイツのGKオリバー・カーンの対決が注目され、ここまで大会を通して16得点のブラジルと1失点のドイツの対決というわかりやすい構図。とはいえ、ドイツもゴールを奪わなければ勝つことはできない。特に今大会のドイツ唯一の失点が、アイルランド戦で1点リードした後に守りに入ってしまい、終了間際に決められたのもであったことをドイツチームは忘れてはいないだろう。攻めなければ、守りきることもできない。セカンドラウンドでは、すべての試合が1-0での勝利となったが、ただ引いて守るだけでなく、ある時間帯にはボールをキープし、ヌビルのドリブルやクローゼへのクロスで相手に危機感を与え続けていたことにドイツの調整能力の高さが見られた。決勝でも前半から積極的な攻めが随所に見られたが、バラックの圧力が欠けたドイツには、ブラジルを崩しきる力はなかった。
ドイツは、これまでまさに獅子奮迅の働きを見せたカーンのミスで敗れた。彼を非難する人はいないだろうが、彼は自らのミスを許すことは出来ないだろう。2点をリードされての終盤に、ドイツチームは攻め手を失い、不屈のゲルマン魂は見られなかったのが残念だったが(あの86年でさえ、0-2から2ゴールを返したのに!)、「カーン、この負けを受け入れよう。バラックも、ダイスラーもいないんだ。2006年がある」というメッセージをチーム全体が発しているように見えた。
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